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KSK2で税務調査はどう変わる?CSVの提出は任意か強制か
私たち税理士法人ゼロベースは過去の前提や状況にとらわれない、「ゼロベース思考」でお客様の無駄を削減し、お客様ご自身が本業に集中できる環境の構築を得意とする、伴走型の税理士法人です。
2026年9月、国税庁の基幹システムが約25年ぶりに刷新され、「KSK2(国税総合管理システム2)」が段階的に稼働を開始することはご存じでしょうか?
これに伴い、一部の経営者の間では「AIの本格導入で税務調査が厳しくなるのでは」といった不安の声が広がっていますが、実際の税務相談の現場で経営者の方からよくお聞きするのは、「税務調査で会計データのCSV提出を求められたが、提出しなければならない義務はあるのか?」というご質問です。
この記事では、freee認定5つ星アドバイザーの税理士法人ゼロベースが、KSK2の稼働によって何が変わるのかを解説し、質問にある「データの提出は義務か否か」について3つのルールに基づいて整理します。正しく理解し、正しく備えれば、税務調査は決して怖いものではありません。ぜひ最後までご覧ください。
KSK2とは何か?─「AI調査システム」ではない
KSK2それ自体は「税務調査を自動化するAI」ではありません。あくまで国税庁の巨大な「データ基盤」のことで、従来のKSKからKSK2へ刷新されます。
KSK2は主に以下の3つのコンセプトに基づいて刷新されています。
- 紙からデータへ(AI-OCRの活用等によるデジタル化)
- 税目の縦割り解消(法人税・所得税・消費税などを横断的に参照)
- メインフレームからオープンシステムへの移行(柔軟なシステム構築)
KSK2は、2026年9月からの稼働が予定されていますが、一部の機能は後ろ倒しとなり、段階的に移行していく巨大なインフラ整備です。
公式のコンセプトには「AIの本格導入」という言葉は含まれていませんが、基盤が整い「データ」が一元化されることで、後述するようにAIが読み込める情報量が爆発的に増えることは間違いありません。
AI活用はすでに進んでいる
では、税務調査にAIは使われていないのかというと、そうではありません。調査対象を選定するためのAI活用は、KSK2の稼働を待たずしてすでに実用化・稼働しています。
2025年12月に公開された国税庁の資料では、AIなどを活用し調査必要度の高い法人を的確に抽出したことで、税務調査の実地調査件数は減少したものの、追徴税額は過去10年で最高水準の3,407億円を記録と、すでにAI活用による効率的かつ精度の高い選定が行われていることが発表されています。
KSK2の刷新をより具体的に例えるならば、AIは大量のデータを処理する「高性能なエンジン」であり、KSK2はそれに大量のデータを送り込む「燃料タンクと配管」の役割です。両者は別物ですが、強力な補完関係にあり、データを貯めるタンクが整理され配管(KSK2)がより太く刷新されることで、エンジン(AI)はより効率的に稼働し始めるというわけです。
税務調査の現場で起きていること──「CSVを用意して」と言われる理由
さて、ここからはご質問にあるCSVの提出に関する説明です。
近年、e-Taxや電子帳簿保存法、インボイス制度の導入により、企業のバックオフィス業務のデジタル化が急速に進みました。それに伴い、税務調査の手法も「分厚い紙の帳簿を1ページずつめくる」アナログな確認から、「パソコン上でデータを検索・照合する」データ監査へと移行しつつあります。
調査官は、数年分の膨大な取引データから特定のキーワード(例:特定の外注先の名前、特定のサブスクリプション費用など)や、不自然な数値を抽出して分析するため、「会計ソフトやfreeeなどから出力した仕訳データやCSVを用意してください」と求めてきます。
この要求に対して「うちはデータでは提出しません」と断ることはできるのでしょうか?
実は、この「データ提出」は、3つの異なる法律に基づいているため、その根拠となる法律の違いを正しく切り分けて理解する必要があります。
「CSV提出」は義務?実態は3つの法律に分かれている
会計データやCSVの提出を求められた際、それが以下のどの法律に基づいているのかを整理しましょう。ここを混同すると「任意か義務(強制)か」の議論が噛み合わなくなります。
【法律1|国税通則法第74条の2(質問検査権)】:「データ提出は協力のお願い」
これは、調査官が税務調査において帳簿書類の「提示・提出」を求めることができる基本的な権限です。正当な理由なく拒否や妨害をした場合には罰則もあり得ます。 しかし、この法律で提出や提示が義務付けられているのは、あくまで「原本」です。もし自社が「紙の帳簿」を原本として運用している場合、調査官から「分析のためにCSVデータもください」と言われても、それは法律上の強制ではなく、「調査をスムーズに進めるための任意のお願い(協力要請)」という位置づけになります。
【法律2|電子帳簿保存法第4条第1項(帳簿の保存方法)】:「データ提出は特例を受けるための条件」
帳簿は本来「紙での保存」が原則ですが、特例として「電子データでの保存」が認められています。自社がこの「電子保存」を選択している場合、電子保存というシステム上「税務職員からのダウンロードの求め(データの提出)」に応じる義務が生じます。 ただし、法律の条文に「CSV形式で提出する」とまでは規定されておらず、指定形式(CSV)での提出は国税庁の通達や一問一答といった、解釈レベルの話にとどまります。万が一データ提出を拒んだ場合、直接的な罰則はありませんが「青色申告の承認取消し」のリスクや、後述する「過少申告加算税の軽減措置(優良な電子帳簿)」が適用されなくなるという、間接的な不利益を被る可能性があります。
【法律3|電子帳簿保存法第7条(電子取引データ)】:「データ提出は完全な義務」
ここが一番誤解されやすいポイントです。
2024年1月より、メールに添付されたPDFの請求書や、WEB上からダウンロードした領収書など、最初から「電子データ」で受け取った取引書類は、電子データのまま保存することが完全義務化されました。 つまり、これらの電子取引データに関しては「紙に印刷して保存しているから、データは出せません」という理屈は法律上通用しません。データで受け取った証拠書類は、データとして提示・提出する義務があります。
このように、データの提出が「任意か強制(義務)か」は場面によって答えが変わります。これらをひとくくりにしてしまうと、議論が噛み合いません。どういった場面でどの法律を根拠としたデータの提出要請なのかしっかりと理解することが必要です。
「freeeで記帳しているが、紙保存だからデータは渡さない」は通用するか?
最後にファイルボックスを活用する最大のメリットの一つが「ペーパーレス化」です。
上記のようなルールが複雑なため、「うちはfreeeで記帳しているけれど、プリントアウトした紙を原本(階層2の原則)とする。だからCSVデータは一切渡さないし、それで防衛できる」と考える方もいるかもしれません。 結論から言うと、この理屈は理論上は成り立つ余地がありますが、実務の実態からすると、決しておすすめできる対策ではありません。
この主張には4つの大きな弱点があります。
- 質問検査権の壁(心証の悪化): たとえ紙を原本としたとしても、手元のパソコンにfreeeのデータが存在している以上、調査官からの協力の要請(法律1)を受ける可能性はあります。実在するデータを頑なに隠そうとすれば、「何か見られたくない不正があるのでは?」と調査官の心証を著しく悪化させ、結果的に調査が厳しく、長引く原因になります。
- 電子取引データの存在: 現代のビジネスにおいて、Amazonの領収書やWEB広告費、システム利用料など、電子上で完了する商取引(法律3)は避けて通れません。そのため帳簿を紙にしたところで、請求書、領収書、契約書、納品書などの証憑データは必ず電子で提出しなければならず、完全に「紙だけ」で逃げ切ることは不可能です。
- 過少申告加算税の軽減措置(優良な電子帳簿)の放棄: データを隠すためにあえて紙保存を主張することで、万が一申告漏れがあった際に加算税が5%軽減される「優良な電子帳簿」の要件を満たすことができなくなります。これは、もしもの時の企業防衛策を捨ててしまうことになります。
- 実態との不整合: 銀行口座やクレジットカードをfreeeに自動同期し、リアルタイムで効率的なデジタル記帳を行っているにもかかわらず、税務調査のときだけ「紙が原本です」と主張するのは、実態と明らかに矛盾しています。
また現実問題として、帳簿(階層2)の話と、証憑(階層3)の話を混同し、紙で提出をすれば良いという主張は、現代の税務調査や、業務の実態においてすでに破綻しつつあると言えます。
まとめ:ゼロベースで考える、本当の調査対策
ここまで、会計データやCSVの提出義務の有無について見てきましたが、「データを提出する・しない」といった駆け引きは、問題の本質ではありません。
私たちゼロベースがおすすめする最大の防御とは、「いつCSVデータを出しても困らない、帳簿を日頃から作っておくこと」です。 freeeを活用し、区分整理や部門コードや品目タグが正しく付与され、訂正・削除の履歴がしっかり残る「優良な電子帳簿」が整っていれば、データ提出は「調査官の信頼を得て、税務調査を早く終わらせるための材料」になります。
また、KSK2の稼働により、法人税と社長個人の所得税、さらには消費税といった「税目横断の照合」が当たり前の時代になります。会社と個人の数字の整合性を説明できる状態にしておくこと。それこそが、これからの税務調査対策の第一歩となります。
「自社の帳簿データは、調査に出しても大丈夫だろうか?」 「freeeをもっと正しく、安全に活用したい」
少しでもご不安がある経営者様は、ぜひ「ゼロベース思考」で経営者に伴走する私たちにご相談ください。最新の税務動向を踏まえ、経営者が本業に集中できるバックオフィス構築をサポートいたします。