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黒字なのにお金がない|「勘定合って銭足らず」の正体
私たち税理士法人ゼロベースは、過去の前提や状況にとらわれない「ゼロベース思考」でお客様の無駄を削減し、お客様ご自身が本業に集中できる環境の構築を得意とする、伴走型の税理士法人です。
決算書や試算表では利益が出ているにもかかわらず、銀行口座を見ると思ったほどお金が残っていない。売上も伸びているのに、給与や仕入代金、税金の支払いが近づくたびに資金繰りが気になる。
このような状態は、決して珍しいものではありません。会社の「利益」と「現金」は、同じように動くわけではないからです。売上を計上しても代金をまだ回収していなければ現金は増えません。
このコラムでは、利益とキャッシュがずれる仕組み、売掛金や在庫、借入返済が資金繰りに与える影響、資金繰り表のつくり方、必要な手元資金、銀行へ相談するタイミングについてご紹介します。
利益とキャッシュがずれる仕組み
会社の経営状況を見るとき、多くの経営者が最初に確認するのは「利益」ではないでしょうか。
売上から仕入、人件費、家賃、広告費などの費用を差し引き、利益が残っていれば、一見すると経営は順調に見えます。しかし、利益が出ていることと、会社に十分な現金があることは別の話です。
利益は「発生」、キャッシュは「入出金」で動く
会計上の売上や費用は、必ずしも実際に現金が動いたタイミングで計上されるわけではありません。
たとえば、3月に100万円の商品を納品し、入金が5月末だった場合、会計上は3月の売上として処理することがあります。3月の損益計算書には100万円の売上が反映されますが、実際に100万円が銀行口座へ入るのは5月です。
反対に、将来販売する商品を先に仕入れた場合には、仕入代金を支払って現金が減っていても、その商品が在庫として残っていれば、支払額のすべてがその時点の費用になるとは限りません。
つまり、以下のように異なる基準で動いています。
- 利益は「売上や費用がいつ発生したか」
- キャッシュは「お金がいつ入って、いつ出ていったか」
そのため、損益計算書が黒字でも、銀行口座の残高が減っていくことがあります。
黒字でも現金が減るケース
ある月に1,000万円の売上を計上し、費用が800万円だったとします。
損益計算上では、
- 売上:1,000万円
- 費用:800万円
- 利益:200万円
となるため、200万円の黒字です。
しかし、売上1,000万円のうち300万円が翌月以降の入金であれば、当月に入ってくる現金は700万円しかありません。
さらに、将来販売するための商品を100万円分追加で仕入れ、銀行へ借入金の元本を100万円返済したとします。利益は200万円出ていても、現金ベースでは、
- 700万円の入金
- -800万円の費用支払い
- -100万円の在庫購入
- -100万円の借入元本返済
となり、単純化すると300万円現金が減ることになります。
経営において重要なのは、利益だけを見るのではなく、「その利益がいつ現金になるのか」まで確認することです。
売掛金・在庫・借入返済という落とし穴
黒字企業の資金繰りを圧迫しやすい代表的なものが、「売掛金」「在庫」「借入金の元本返済」です。
いずれも損益計算書だけを見ていると、資金への影響を把握しにくい項目です。
売掛金が増えると売上が伸びても現金は増えない
売掛金とは、商品やサービスを提供して売上は発生しているものの、まだ代金を回収していない金額です。
特に売上が急激に伸びている会社では、売掛金も同時に増えることがあります。
たとえば、毎月500万円だった売上が1,000万円に増えたとしても、入金が2か月後であれば、先に仕入代金や給与、外注費などを支払わなければならない可能性があります。
つまり、成長すればするほど先に必要となる資金が増えることもあるということです。「売上が伸びているから資金繰りも楽になる」とは限りません。売上の増加を見るときは、売掛金の残高や回収までの日数もあわせて確認する必要があります。
在庫が増えると現金が商品に変わる
在庫も資金繰りを考えるうえで重要な項目です。商品や原材料を購入すれば、その時点で会社から現金が出ていきます。
しかし、購入した商品がまだ販売されず在庫として残っている場合、その金額は資産として貸借対照表に計上されます。
そのため、在庫を大量に仕入れると、損益計算書上では大きな赤字になっていなくても、銀行口座からは多額のお金が出ていくことがあります。
特に、以下のような場合には注意が必要です。
- 売れる可能性を見込んで多めに仕入れている
- 季節商品を先行して仕入れている
- 長期間売れていない商品が残っている
- 原材料を必要以上に抱えている
在庫は会社にとって資産ですが、販売して代金を回収するまでは現金として使えません。在庫が増え続けている場合には、本当に必要な量なのか、回転が遅くなっている商品がないかを確認することが大切です。
借入金の元本返済は利益を減らさず現金だけが減る
借入金の返済も、利益とキャッシュがずれる大きな理由です。銀行へ借入金を返済するとき、利息部分は費用になりますが、元本部分は基本的に費用にはなりません。
たとえば、毎月100万円を返済している会社で、そのうち元本が95万円、利息が5万円だった場合、損益計算書上の費用になるのは原則として5万円の利息部分です。
一方、銀行口座からは100万円が出ていきます。年間では元本だけで1,140万円の現金が減ることになります。
そのため、決算書上では十分な利益が出ていても、借入金の年間返済額が大きければ、手元資金は増えない可能性があります。新規借入や借換えを検討するときには、「いくら借りられるか」だけでなく、「毎月いくら返済することになるのか」まで確認する必要があります。
資金繰り表のつくり方
「黒字なのにお金がない」という状態を防ぐためには、現在の銀行残高を見るだけでは十分ではありません。
重要なのは、数か月先までのお金の動きを予測することです。そのために活用したいのが「資金繰り表」です。
6か月から1年程度先までのお金の動きを並べる
資金繰り表では、現在の預金残高を起点として、今後予定されている入金と支払いを月ごとに整理します。
基本的には、以下の流れで考えます。
- 期首の現預金残高
- +売掛金などの入金
- -仕入代金の支払い
- -給与や家賃などの経費
- -税金や社会保険料
- +借入金の入金
- -借入金の返済
- =月末の現預金残高
まずは6か月から1年程度先まで作成すると、将来の資金不足を把握しやすくなります。
さらに直近の資金繰りが厳しい場合には、月単位だけでなく週単位で入出金を確認することも有効です。
売上ではなく「入金日」、経費ではなく「支払日」で考える
資金繰り表を作るときに重要なのは、損益計算書をそのまま写さないことです。
たとえば、8月に売上を計上しても10月入金であれば、資金繰り表では10月の入金として考えます。
仕入についても、8月に商品を仕入れて9月末に支払うのであれば、資金が減るのは9月です。また、税金や社会保険料、賞与、保険料、設備投資など、毎月発生しない支払いも忘れないようにしましょう。
特に法人税や消費税は金額が大きくなりやすいため、「納税月になってから資金を確認する」のではなく、あらかじめ資金繰り表へ組み込んでおくことが大切です。
予測と実績のずれを毎月確認する
資金繰り表は、一度作成して終わりではありません。
毎月、以下の項目を確認し、実績に合わせて更新していく必要があります。
- 予定していた売上を達成できたか
- 予定どおり売掛金を回収できたか
- 想定していなかった支出が発生していないか
- 在庫が増えすぎていないか
たとえば、半年後に資金が不足する予測だったとしても、3か月後の売上や入金状況が改善すれば、見通しは変わります。反対に、売上が予算を下回ったり、回収が遅れたりすれば、予定より早く資金不足になる可能性があります。
予算と実績を比較しながら資金繰り表を更新することで、経営者は問題が大きくなる前に次の一手を考えやすくなります。
手元資金は何か月分あれば安心か
資金繰りを考えるときに、「銀行口座にはいくら残しておけばよいのか」と疑問に思う経営者も多いでしょう。
必要な手元資金に、すべての会社へ当てはまる絶対的な金額はありません。業種や売上規模、回収条件、固定費、借入返済額などによって大きく異なるためです。
まずは固定費3か月分を一つの目安として考える
一つの考え方として、給与、家賃、リース料など、売上がなくても発生する固定的な支出の3か月分程度を確保できているか確認してみる方法があります。
たとえば、毎月の固定的な支払いが500万円なら、1,500万円程度の手元資金があると、突然売上が落ち込んだ場合でも一定期間対応できます。
しかし、3か月という期間はあくまで目安です。売上の変動が大きい会社や入金までの期間が長い会社、借入返済額が大きい会社では、6か月分程度など、より余裕を持って確保することも検討する必要があります。
会社ごとの「最低残高」を決めておく
重要なのは、なんとなく「これくらいあれば大丈夫」と判断するのではなく、自社として維持したい最低限の預金残高を決めることです。
たとえば、以下を考慮して設定します。
- 通常月の固定費
- 借入金の返済額
- 税金、社会保険料
- 賞与
- 設備投資予定
- 売掛金の回収期間
- 売上減少時に耐えたい期間
仮に「現預金2,000万円を下回らない」という基準を設けておけば、資金繰り表上で半年後に1,500万円まで減少する予測が出た段階で、支出の見直しや資金調達について検討できます。
資金がほとんどなくなってから対策を考えるのではなく、あらかじめ警戒ラインを決めておくことが重要です。
銀行に相談すべきタイミング
資金調達で特に重要なのは「いつ銀行に相談するか」です。
資金が不足してから銀行へ相談すればよいと思われることもありますが、実際には余裕があるうちに相談することが重要です。
銀行融資には、必要書類の準備や金融機関による審査など一定の時間が必要になるためです。
資金不足が見えてからではなく、見えそうな段階で相談する
資金繰り表を作成して、数か月後に手元資金が大きく減ることが分かった場合は、その時点で対応を検討します。
たとえば、以下のような状況であれば、早めに銀行や専門家へ相談することが大切です。
- 売上増加に伴い運転資金が必要になる
- 大きな設備投資を予定している
- 納税や賞与で資金が減少する
- 売掛金の入金まで時間がかかる
- 借入金の返済負担が大きくなる
- 半年後に最低限確保したい預金残高を下回る
会社の業績や財務状況に余裕がある段階のほうが、資金調達について選択肢を検討しやすくなります。
銀行には「なぜ必要なのか」を数字で説明する
銀行へ融資を相談する際には、「お金が足りないので貸してほしい」という説明だけでは十分ではありません。重要なのは、以下のように数字で説明できる状態にしておくことです。
- なぜ資金が必要なのか
- いくら必要なのか
- いつ必要なのか
- 借りた資金を何に使うのか
- 今後どのように返済していくのか
そのため、銀行へ相談する前には、試算表や決算書だけでなく、資金繰り表、今後の予算、借入金の返済予定などを整理しておくと、自社の状況を説明しやすくなります。
黒字であっても、売掛金や在庫が増えたり、借入返済や設備投資が重なったりすれば、現金は減っていきます。反対に、利益が一時的に少なくても、十分な手元資金があり、今後の資金繰りを把握できていれば、落ち着いて経営判断を行いやすくなります。
経営では、「いくら利益が出ているか」だけでなく、「半年後、1年後にいくら現金が残るのか」という未来の数字を見ることが重要です。
税理士法人ゼロベースでは、月次の会計数値を確認するだけでなく、資金繰りや予実管理、事業計画、設備投資、資金調達など、会社の未来に関わる財務面のご相談にも対応しています。
資金繰り表を作成したことがない、利益は出ているものの手元資金が増えない、今後どの程度の資金を確保すればよいかわからない、銀行へ相談するタイミングを整理したいといった場合には、ぜひお気軽にご相談ください。
会社のお金の流れを見える化し、資金不足が起きる前に対策を考えられる体制を整えていきましょう。
税理士法人ゼロベース 「数字の先に、意志のある経営を。」