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消費税の課税方式、本則と簡易どちらが得か
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消費税の課税事業者になると、申告にあたって「どの方法で消費税を計算するか」が重要になります。
代表的な計算方法には、実際の仕入れや経費に含まれる消費税額をもとに計算する「本則課税」と、業種ごとに定められたみなし仕入率を使う「簡易課税」があります。また、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった場合には、一定の要件のもと「2割特例」を利用できるケースもあります。
この記事では、本則課税・簡易課税・2割特例の違いをはじめ、業種別のみなし仕入率、設備投資が多い年の注意点、本則課税で必要となる仕入税額控除の計算方法、有利な課税方式を判断するためのシミュレーションについて解説します。
本則課税・簡易課税・2割特例の違い
消費税の計算方法を検討する際は、まず本則課税・簡易課税・2割特例の仕組みを理解しておくことが大切です。
同じ売上高であっても、適用する方法によって納付税額が異なることがあります。
本則課税は実際の仕入税額をもとに計算する
消費税の納付税額は、基本的に売上時に預かった消費税額から、仕入れや経費などの支払い時に負担した消費税額を差し引いて計算します。
この原則的な計算方法が「本則課税」です。「一般課税」と呼ばれることもあります。
たとえば、売上に係る消費税額が100万円、仕入れや経費などについて控除できる消費税額が60万円だった場合、単純化すると次のように計算できます。
- 100万円-60万円=40万円
この場合、40万円が納付税額となります。本則課税では、実際に発生した課税仕入れをもとに計算できるため、商品仕入れや外注費、設備投資などが多い企業では、仕入税額控除が大きくなりやすい点が特徴です。
一方、仕入税額控除を受けるためには、取引ごとの税区分を適切に処理し、原則として帳簿やインボイスなどを保存する必要があります。課税売上と非課税売上が混在する企業では、仕入税額控除の計算がさらに複雑になる場合があります。
簡易課税は業種ごとのみなし仕入率を使う
簡易課税では、実際に支払った消費税額を一つひとつ集計するのではなく、売上に係る消費税額に業種ごとの「みなし仕入率」を用いて仕入税額控除を計算します。
たとえば、売上に係る消費税額が100万円、みなし仕入率が50%の場合、仕入税額控除は50万円とみなされます。
- 100万円-50万円=50万円
したがって、単純化すると納付税額は50万円です。
簡易課税を利用できるのは、原則として基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者です。
また、簡易課税を利用するには、原則として適用を受けようとする課税期間が始まる前までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しておく必要があります。
実際の仕入額ではなく、あらかじめ決められたみなし仕入率を使うため、経理処理や消費税計算の負担を軽減しやすい点がメリットです。しかし、実際の仕入率がみなし仕入率を上回る企業では、本則課税のほうが有利になる場合があります。
2割特例は売上税額の2割を納付する
インボイス制度をきっかけとして免税事業者から課税事業者になった一定の事業者には、「2割特例」が設けられています。
2割特例では、売上に係る消費税額の20%を納付税額として計算できます。たとえば、売上に係る消費税額が100万円であれば、納付税額は原則として20万円です。
実際の仕入税額や業種別のみなし仕入率を使用しないため、対象となる事業者にとっては比較的シンプルな方法です。しかし、2割特例はすべての課税事業者が利用できる制度ではありません。
インボイス発行事業者への登録をきっかけとして免税事業者から課税事業者になったことなど、一定の要件を満たす必要があります。
また、2割特例は恒久的な制度ではありません。2026年9月30日までの日が属する課税期間までが対象となる経過措置のため、利用している事業者は終了後の計算方法も検討しておく必要があります。
本則課税・簡易課税・2割特例の主な違いをまとめると、次のとおりです。
| 課税方式 | 仕入税額控除の考え方 | 主な特徴 |
| 本則課税 | 実際の課税仕入れ等をもとに計算 | 仕入れや設備投資が多いと有利になる可能性がある |
| 簡易課税 | 業種ごとのみなし仕入率で計算 | 計算を簡素化しやすく、業種によっては本則課税より有利 |
| 2割特例 | 売上税額の80%を控除したものとして計算 | 対象者は納付税額を売上税額の2割にできる |
どの方法が有利になるかは、売上高だけでなく、実際の仕入れや経費の内容まで含めて判断することが大切です。
業種別のみなし仕入率
簡易課税を検討するときに重要になるのが「みなし仕入率」です。
簡易課税では、事業内容を第1種事業から第6種事業までに区分し、それぞれ異なるみなし仕入率を用いて納付税額を計算します。
簡易課税のみなし仕入率は6種類に分かれる
主な事業区分とみなし仕入率は、次のとおりです。
| 事業区分 | 主な業種 | みなし仕入率 |
| 第1種事業 | 卸売業 | 90% |
| 第2種事業 | 小売業など | 80% |
| 第3種事業 | 製造業、建設業など | 70% |
| 第4種事業 | 飲食店業など、ほかの区分に該当しない事業 | 60% |
| 第5種事業 | サービス業、運輸通信業、金融・保険業など | 50% |
| 第6種事業 | 不動産業 | 40% |
みなし仕入率が高いほど、仕入税額控除として計算される金額が大きくなり、納付税額は少なくなる傾向があります。
たとえば、売上に係る消費税額が100万円の場合、第1種事業ではみなし仕入率90%を使用するため、単純化すると納付税額は10万円です。
一方、第5種事業ではみなし仕入率が50%であるため、納付税額は50万円となります。同じ売上税額でも、業種によって簡易課税の納付税額は大きく変わります。
人件費の割合が高い業種は簡易課税が有利になることがある
簡易課税が有利になりやすいかどうかを判断する際は、売上だけでなく経費の内容も確認する必要があります。
特にポイントとなるのが人件費です。従業員へ支払う給与や賞与は、原則として消費税の課税仕入れには該当しません。
そのため、本則課税では人件費が増えても仕入税額控除は増えません。たとえば、コンサルティング会社やIT企業など、売上に対して給与の割合が高く、課税仕入れとなる商品仕入れや外注費が比較的少ない企業では、実際の仕入率よりみなし仕入率のほうが高くなるケースがあります。
その場合、簡易課税のほうが納付税額を抑えられる可能性があります。一方、商品仕入れや材料費、外注費など、消費税が課税される支出が多い企業では、実際の仕入税額がみなし仕入率による控除額を上回り、本則課税のほうが有利になることもあります。
複数事業を行う場合は売上区分に注意する
一つの会社で複数の事業を行っている場合には、売上を事業区分ごとに整理することも重要です。
たとえば、商品の販売とコンサルティングサービスの両方を行っている会社であれば、小売業に該当する売上とサービス業に該当する売上が混在する可能性があります。
それぞれ適用されるみなし仕入率が異なるため、簡易課税を選択したからといって、すべての売上に同じ率を適用できるとは限りません。
事業ごとの売上を適切に区分していない場合、消費税の計算を誤る原因にもなります。自社がどの事業区分に該当するのか、複数の事業を行っている場合にどのように売上を区分するのかを事前に整理しておきましょう。
設備投資が多い年の注意点
本則課税と簡易課税の有利・不利が特に変わりやすいのが、大きな設備投資を行う年です。
簡易課税が通常の年には有利だったとしても、設備投資を行う年には本則課税のほうが有利になることがあります。
本則課税では設備投資の消費税を控除できる
事務所や店舗の内装工事、製造設備、業務用機械、パソコン、サーバーなどを購入すると、その支払いに含まれる消費税額も大きくなります。
本則課税では、一定の要件を満たす課税仕入れであれば、こうした設備投資に係る消費税額を仕入税額控除に反映できます。
たとえば、設備投資によって仕入税額控除が大きくなり、売上に係る消費税額を上回った場合には、消費税の還付を受けられる可能性もあります。
設備投資額が大きい事業年度では、本則課税を選択しているかどうかが納税額に大きく影響することがあります。
簡易課税では実際の設備投資額が直接反映されない
一方、簡易課税では、実際にいくら設備投資をしても、基本的には売上税額とみなし仕入率を使って納付税額を計算します。
たとえば、第5種事業のみなし仕入率は50%です。1,000万円の設備を購入したとしても、それによってみなし仕入率が50%から引き上げられるわけではありません。
実際に負担した消費税額が大きくても、その金額をそのまま仕入税額控除に反映することはできないため、高額な設備投資を予定している企業では注意が必要です。
2割特例についても、実際の仕入税額ではなく売上税額を基準として納付税額を計算します。そのため、設備投資による消費税負担が大きい事業年度では、本則課税を選択した場合との差が大きくなる可能性があります。
課税方式は設備投資を行う前に検討する
課税方式については、設備を購入してから考えるのではなく、設備投資を計画する段階で検討しておくことが重要です。
簡易課税制度は原則として、適用を受けようとする課税期間が始まる前に届出が必要です。そのため、設備を購入した後に「本則課税のほうが有利だった」と気づいても、すぐに課税方式を変更できないケースがあります。
翌期に店舗の改装を予定している、製造設備を更新する予定がある、新しいシステムを導入する予定があるといった場合には、その支出まで含めて本則課税と簡易課税を比較することが重要です。
また、一定の高額な資産を取得した場合には、その後の簡易課税制度の適用などに制限が生じることもあります。設備投資をする年度だけでなく、その後の事業年度まで含めた判断が必要です。
一括比例配分方式と個別対応方式
本則課税を選択している場合でも、すべての企業が同じ方法で仕入税額控除を計算するわけではありません。
課税売上と非課税売上が混在している企業などでは、「個別対応方式」または「一括比例配分方式」によって控除額を計算する場合があります。
仕入税額控除を全額控除できない場合がある
課税期間における課税売上高が5億円以下で、かつ課税売上割合が95%以上の場合には、原則として課税仕入れ等に係る消費税額を全額控除できます。
一方、課税売上高が5億円を超える場合、または課税売上割合が95%未満の場合には、課税仕入れ等に係る消費税額の全額をそのまま控除することはできません。
仕入税額控除の対象となる金額を、個別対応方式または一括比例配分方式によって計算します。土地の譲渡や住宅の貸付など、消費税が非課税となる売上がある企業では、特に確認が必要です。
個別対応方式は仕入れの用途ごとに分けて計算する
個別対応方式では、課税仕入れなどを次の3種類に区分します。
- 課税売上にのみ対応するもの
- 非課税売上にのみ対応するもの
- 課税売上と非課税売上の両方に共通するもの
課税売上にのみ対応する仕入れについては、その消費税額を原則として控除できます。課税売上と非課税売上の両方に共通する仕入れについては、課税売上割合を用いて控除額を計算します。
一方、非課税売上にのみ対応する仕入れについては、原則として仕入税額控除の対象になりません。たとえば、次のようなケースを考えてみます。
- 課税売上のみに対応する仕入税額:70万円
- 非課税売上のみに対応する仕入税額:10万円
- 共通する仕入税額:20万円
- 課税売上割合:80%
個別対応方式では、次のように計算します。
- 70万円+20万円×80%=86万円
この場合、86万円が仕入税額控除の対象となります。個別対応方式では、課税売上に直接対応する仕入れが多い場合に控除額が大きくなる可能性があります。
一方で、日々の経理処理の段階から、仕入れや経費がどの売上に対応しているのかを整理しておく必要があります。
一括比例配分方式は課税売上割合を一律に掛ける
一括比例配分方式では、課税仕入れ等に係る消費税額全体に課税売上割合を掛けて仕入税額控除を計算します。
先ほどと同じケースでは、課税仕入れ等に係る消費税額の合計は100万円です。
- 100万円×80%=80万円
したがって、仕入税額控除は80万円となります。
先ほどの個別対応方式では86万円だったため、この例では個別対応方式のほうが6万円多く控除できます。しかし、常に個別対応方式のほうが有利になるわけではありません。
仕入れや経費の内訳によって結果は異なるため、実際の数字を使って比較する必要があります。また、一括比例配分方式を選択した場合には、原則として一定期間継続して適用する必要があるため、単年度の計算結果だけで判断しないことも大切です。
有利判定はシミュレーションで
本則課税と簡易課税のどちらが有利なのかは、業種名だけでは判断できません。
実際の売上や仕入れ、経費、設備投資の予定などを使ってシミュレーションすることが重要です。
通常年の仕入率をもとに比較する
まずは、通常の事業年度にどの程度の課税仕入れが発生しているのかを確認します。
たとえば、売上に係る消費税額が100万円で、第5種事業に該当するサービス業を考えます。実際に控除できる仕入税額が45万円だった場合、単純化すると次のようになります。
| 課税方式 | 概算納付税額 |
| 本則課税 | 55万円 |
| 簡易課税(第5種・50%) | 50万円 |
| 2割特例 | 20万円 |
2割特例を利用できる事業者であれば、このケースでは2割特例の納付税額が最も少なくなります。
2割特例を利用できない場合には、本則課税よりも簡易課税のほうが5万円少なくなります。このように、通常年の売上と課税仕入れを使って比較することで、自社の基本的な傾向を把握できます。
設備投資を含めると有利な方式が変わることがある
次に、設備投資が発生した場合を考えてみます。先ほどと同じ会社で、設備投資などによって控除可能な仕入税額が90万円に増えたとします。
| 課税方式 | 概算納付税額 |
| 本則課税 | 10万円 |
| 簡易課税(第5種・50%) | 50万円 |
| 2割特例 | 20万円 |
このケースでは、本則課税の納付税額が最も少なくなります。簡易課税では設備投資によって実際の仕入税額が増えても、みなし仕入率は変わりません。
そのため、通常年は簡易課税が有利でも、大きな設備投資をする年には本則課税のほうが有利になる場合があります。
2~3年先の事業計画まで含めて判断する
消費税の課税方式を判断するときは、1年間だけでなく、翌期以降の事業計画も確認することが大切です。
特に、次のような項目を整理しておくとシミュレーションしやすくなります。
- 今後の売上見込み
- 業種とみなし仕入率
- 商品仕入れや材料費の金額
- 外注費など課税仕入れとなる経費
- 給与など仕入税額控除の対象にならない支出
- 設備投資や内装工事などの予定
- 課税売上と非課税売上の割合
- 2割特例などを利用できるか
- 簡易課税制度の届出状況
- 翌期以降の事業計画
消費税は、決算が終わってから納税額を確認するだけでは、選択できる対策が限られてしまうことがあります。
翌期の事業計画や設備投資の予定を確認しながら、事前に本則課税と簡易課税の納税額を比較しておくことが重要です。
消費税の課税方式は事前に比較して選択しよう
本則課税と簡易課税のどちらが有利になるかは、売上規模だけでは判断できません。
商品仕入れや材料費が多いのか、人件費の割合が高いのか、高額な設備投資を予定しているのかなど、自社の事業構造によって結果は変わります。
また、簡易課税を選択する場合には届出期限があり、設備投資などの状況によっては制度の適用に一定の制限が生じる場合もあります。
そのため、「今年は簡易課税のほうが安い」といった単年度の比較だけではなく、翌期以降の売上や経費、設備投資まで含めて検討することが大切です。
税理士法人ゼロベースでは、日々の会計処理や消費税申告だけでなく、売上や経費、設備投資などを踏まえた納税予測にも対応しています。
課税方式によって納税額が大きく変わる場合もあるため、決算直前ではなく、次の事業年度が始まる前から検討しておきましょう。
税理士法人ゼロベース 「数字の先に、意志のある経営を。」