Column
飲食料品の消費税が2年間1%に|2027年4月からの引下げで事業者が準備すること
私たち税理士法人ゼロベースは、過去の前提や状況にとらわれない「ゼロベース思考」でお客様の無駄を削減し、お客様ご自身が本業に集中できる環境の構築を得意とする、伴走型の税理士法人です。
2026年(令和8年)9月15日、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定され、国税庁からその内容を説明するパンフレットが公表されました。
内容は、2027年(令和9年)4月1日から2029年(令和11年)3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げるというものです。
消費者にとってはうれしい話ですが、事業者にとっては、レジや値札の切り替えだけでなく、消費税の納税額そのものが大きく変わる可能性があります。業種によっては、何もしないと損をしてしまうケースもあります。
このコラムでは、国税庁のパンフレットをもとに、対象品目と税率、経過措置、届出の特例、簡易課税・中間申告・総額表示の特例、そして業種別に考えておきたいポイントをご紹介します。
※ 本記事の内容は、2026年9月時点の改正案に基づくものです。今後、法案が国会で可決・成立した場合に適用されます。
対象品目と税率|対象は今の「軽減税率8%」と同じ範囲
税率1%の対象となるのは、2027年4月1日から2029年3月31日までの間に行われる飲食料品の販売(輸入の場合は保税地域からの引取り)です。
対象となる飲食料品の範囲は、現在の軽減税率(8%)の対象と同じです。酒類を除く食品のほか、一定の要件を満たす一体資産(食品と食品以外がセットになったもので、税抜1万円以下かつ食品の割合が3分の2以上のもの)も含まれます。
| 飲食料品 | 新聞の定期購読 | その他 | |
|---|---|---|---|
| 消費税率 | 0.78% | 6.24% | 7.8% |
| 地方消費税率 | 0.22% | 1.76% | 2.2% |
| 合計 | 1% | 8% | 10% |
新聞の定期購読は8%のまま据え置かれる点に注意が必要です。
外食・ケータリングは10%のまま
区分の考え方も、今の軽減税率と同じです。
- 1%:テイクアウト、出前・宅配、有料老人ホーム等での飲食料品の提供、学校給食など
- 10%:外食(店内飲食・イートイン)、ケータリング・出張料理、酒類
イートインかテイクアウトかは、今と同じく、飲食料品を提供する時点で顧客の意思を確認して判定します。今までの「8%」と「10%」の差は2%でしたが、引下げ後は「1%」と「10%」で9%の差になるため、レジでの判定や会計処理の誤りがこれまで以上に金額へ響く点に注意しましょう。
インボイスの記載は「1%」に変えるだけ
インボイスには、適用税率1%とその消費税額等を記載します。それ以外の記載事項に変更はなく、「軽減税率の対象品目である旨」に代えて「税率1%の対象品目である旨」を新たに記載する必要もありません。
なお、2027年4月以後に、8%で販売した飲食料品の返品や貸倒れがあった場合は、8%で調整計算を行います。
4月以後でも8%になる取引がある|定期便と通販の経過措置
2027年4月1日以後の販売であっても、次のような取引には8%が適用されます。
- 定期供給契約:2027年1月1日前に締結した定期供給契約(例:代金を先払いしておくと季節の食材が毎月届く定期便など)に基づき、4月1日前に代金を受け取っているもの(受け取っている部分に限ります)
- 通信販売:2027年1月1日前に販売条件を提示し(例:お中元やギフトのカタログ販売など)、4月1日前に申込みを受けたもの
ただし、税率1%を前提として契約や条件提示をしている場合や、契約等が変更された場合は除かれます。定期便やカタログギフトを扱う事業者は、2027年1月1日が一つの区切りになりますので、年内に販売条件や契約書の記載を確認しておきましょう。
飲食店は納税額が増え、食品小売は還付の可能性も
今回の引下げで特に注意したいのは、業種によって消費税の納税額が大きく変わることです。
飲食店(イートイン中心)の場合
飲食店は、食材を仕入れるときは1%、お客様から受け取る飲食代は10%です。これまで食材の仕入れにかかる8%分を控除できていたのが1%分しか控除できなくなるため、売上が同じでも納める消費税が増えることになります。資金繰りへの影響も含めて、早めに試算しておくことをおすすめします。
食品の小売・卸の場合
反対に、食品スーパーや食品卸などは、売上の大部分が1%になる一方、家賃や包材、水道光熱費などの経費は10%のままです。そのため、仕入れ・経費にかかる消費税のほうが大きくなり、還付を受けられる可能性があります。
ただし、還付を受けられるのは、課税事業者として一般課税(本則課税)で申告している場合だけです。免税事業者や簡易課税の事業者は、そのままでは還付を受けられません。そこで、今回の改正では次の届出の特例が設けられます。
届出の特例|引下げ開始の課税期間中に出せば間に合う
免税事業者が課税事業者になる場合
本来、免税事業者が課税事業者を選ぶには、その課税期間が始まる前に「課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。
今回の特例では、飲食料品の販売を行う免税事業者が、2027年4月1日を含む課税期間中に届出書を提出すれば、その課税期間から課税事業者になれます。届出書の「参考事項」欄には「飲食料品特例」と記載します。
ただし、注意点が2つあります。
- 課税期間の初日にさかのぼって課税事業者になるため、たとえば12月決算法人や個人事業者は、2027年1月から3月までの飲食料品の販売に8%が適用され、その分の申告も必要になります。
- 課税事業者を選択すると、原則として2年間は課税事業者として申告が必要です。免税事業者に戻るには「課税事業者選択不適用届出書」の提出が必要です。
このほか、インボイス発行事業者の登録申請により、課税期間の途中(たとえば2027年4月1日)から課税事業者になる方法もあります。この場合、4月1日から登録を受けるには、3月17日までに登録申請書を提出します。
簡易課税の事業者が一般課税に切り替える場合
簡易課税をやめるには、本来、その課税期間が始まる前に「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があり、さらに簡易課税を選択してから2年間は継続しなければなりません(いわゆる「2年縛り」)。
今回の特例では、飲食料品の販売を行う簡易課税の事業者が、2027年4月1日を含む課税期間中に不適用届出書を提出すれば、その課税期間から一般課税で申告できます。この課税期間については2年縛りも適用されません。こちらも「参考事項」欄に「飲食料品特例」と記載します。
簡易課税を続ける場合の計算の特例
簡易課税を続ける場合は、業種区分にかかわらず、飲食料品(1%)の売上税額と同じ額を仕入税額とする特例が設けられます。つまり、飲食料品の売上部分の納税額はゼロになります。2割特例・3割特例を使う場合も同様です。
国税庁のパンフレットでは、次のような例が示されています。
| 事業 | みなし仕入率 | 売上(税額) | 仕入税額 |
|---|---|---|---|
| 飲食料品の小売(1%) | ―(売上税額と同額) | 2,000万円(20万円) | 20万円 |
| 雑貨などの小売(10%) | 80%(第2種) | 300万円(30万円) | 24万円 |
| イートイン(10%) | 60%(第4種) | 100万円(10万円) | 6万円 |
| 合計 | 売上税額 60万円 | 50万円 |
納付税額は60万円-50万円=10万円です(税額には地方消費税を含みます)。
なお、いわゆる75%ルール(1種類の事業が売上の75%以上を占める場合の特例計算)の判定は、飲食料品(1%)の取引を除いて行います。
中間申告と総額表示の特例
中間申告は「1%で計算し直した額」で出せる
消費税の中間申告は、原則として前の課税期間の税額をもとに計算します。そのため、売上の多くが1%になる食品小売などでは、引下げ後の中間納付が過大になってしまいます。
そこで、2027年4月1日以後に開始する中間申告対象期間については、前の課税期間の飲食料品の売上げ・仕入れに1%が適用されたものとして計算し直した税額で、仮決算による中間申告ができます。引下げが終わる2029年4月1日以後も、同様に8%で計算し直した額で中間申告ができます。
値札の貼り替えが間に合わない場合
消費者向けの価格表示は、税込価格の表示(総額表示)が義務です。今回は、夜間の値札の貼り替えが間に合わない、パッケージに価格が印字されているなどの事情がある場合、2027年2月1日から5月31日までは、実際の支払額と誤認させない掲示をしていることを条件に、8%または1%での総額表示が認められます。引下げ終了時(2029年2月1日から5月31日まで)も同様です。
ただし、税抜価格だけを表示する方法は、引き続き認められません。
今から準備しておきたいこと
- 業種別の影響を試算する:飲食店は納税額の増加と資金繰り、食品小売・卸は還付の可能性を確認する
- 届出の要否を判断する:免税事業者・簡易課税の事業者は、課税事業者の選択や一般課税への切り替えが有利かどうかを検討する
- 定期便・通販の条件を確認する:2027年1月1日までの契約・条件提示の扱いを整理する
- レジ・会計ソフトの設定を準備する:1%の税区分、イートイン・テイクアウトの判定、値札の切り替え手順を確認する
まとめ|「消費者にうれしい減税」は事業者にとって大きな変化
2027年4月から2年間、飲食料品の消費税率が1%に引き下げられる見込みです。対象品目は今の軽減税率と同じですが、飲食店は納税額が増え、食品小売・卸は還付を受けられる可能性があるなど、業種によって影響が大きく分かれます。
特に、免税事業者や簡易課税の事業者は、届出の特例を使うかどうかで2年間の納税額が変わります。法案の成立を待ってからでは準備が間に合わないこともありますので、今のうちに自社への影響を確認しておきましょう。
税理士法人ゼロベースでは、freee会計のデータをもとに、税率引下げによる納税額の変化や、一般課税・簡易課税の有利判定のシミュレーションを行っています。飲食店・食品関連の事業者の方は、お気軽にご相談ください。
参考:国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」(令和8年9月)
監修:税理士法人ゼロベース 公認会計士・税理士 渡邊勇教
税理士法人ゼロベース 「数字の先に、意志のある経営を。」